こんにちは。SHIPマインドフルネス瞑想センター の「うえ田ボビ夫」です。
私たちは、さまざまな意味で「ストレス」という言葉を使います。
心理学や医学では、ストレスの原因となる出来事をストレッサー、それによって心や身体、行動に起きる変化をストレス反応と呼び、分けて考えます。
この二つを区別すると、いま何が自分の負担になり、どこに働きかければよいのかが見えやすくなります。
ストレッサーとストレス反応の違い
「上司がストレスだ」という場合は、上司との関係や職場環境など、負担の原因を指しています。
一方、「ストレスで胃が痛い」という場合は、その原因に対して身体に起きた反応を指しています。
日常会話では、どちらも「ストレス」で問題ありません。ただし、自分の状態を理解して対処するときには、次のように分けることが役立ちます。
- ストレッサー:何が自分に負担を与えているのか
- ストレス反応:その結果、自分に何が起きているのか
ストレッサーとは「負担をもたらす刺激や状況」
ストレッサーとは、心や身体にストレス反応を引き起こす刺激や状況のことです。
厚生労働省の「こころの耳」では、ストレッサーを次のように分類しています。
物理的なストレッサー
暑さ、寒さ、騒音、強い光、混雑など、物理的な環境から受ける刺激です。
化学的なストレッサー
薬物、有害物質、酸素の不足や過剰など、化学的な刺激です。
生物的・生理的なストレッサー
病気、炎症、感染、痛み、睡眠不足、空腹など、身体の状態に関係するものです。
心理的・社会的なストレッサー
仕事の負担、人間関係、家庭の問題、経済的な不安、役割上の責任、将来への心配などです。
私たちが日常で「ストレス」と呼んでいるものの多くは、心理的・社会的なストレッサーです。
ストレッサーは、大きな出来事だけではありません。メールの返信、予定の変更、周囲の音、仕事上の小さな行き違いも、重なったり長く続いたりすると大きな負担になります。
ストレス反応とは「心と身体に起こる反応」
ストレス反応とは、ストレッサーに対応しようとして、心や身体、行動に起きる変化です。
心理面では、不安、イライラ、気分の落ち込み、集中力や意欲の低下などが現れます。
身体面では、心拍数の上昇、浅い呼吸、筋肉の緊張、頭痛、肩こり、胃腸の不調、不眠、疲労などが起こります。
行動面では、食べすぎ、飲酒や喫煙の増加、人との関わりを避ける、そわそわする、仕事上のミスや衝動的な行動が増える場合があります。
ストレス反応が起きること自体は、弱さや異常の表れではありません。
心と身体が、その状況に対応しようとしているサインでもあります。
一時的な反応であれば、負担がなくなったり、十分に休んだりすることで落ち着いていきます。ただし、強い負担や長期間のストレスが続くと、回復しにくくなることがあります。

同じ出来事でも反応が異なる理由
同じ出来事を経験しても、全員に同じストレス反応が起きるわけではありません。
人前で話すことを「自分の考えを伝える機会」と捉える人もいれば、「失敗して評価を下げるかもしれない場面」と捉える人もいます。
また、同じ人でも、十分に眠れている日と、疲れがたまっている日では反応が変わります。
ストレス反応には、出来事の受け止め方だけでなく、過去の経験、心身の状態、自分で対処できるという感覚、周囲の支援、負担が続く期間などが影響します。
反応の強さは、本人の性格だけで決まるものではありません。置かれている状況や、利用できる支援との関係でも変わります。
「出来事」「受け止め方」「反応」を分ける
ストレスを感じたときには、次の三つに分けて整理してみます。
1.何が起きたのか
まず、実際に起きた出来事を確認します。
「会議で、自分の提案について修正を求められた」
これがストレッサーです。
2.どのように受け止めたのか
次に、その出来事に対して浮かんだ考えを確認します。
「自分の能力を否定された」
「期待に応えられなかった」
「次も失敗するかもしれない」
3.心や身体に何が起きたのか
最後に、そのときの反応を確認します。
「胸が苦しくなった」
「肩に力が入った」
「不安や悔しさが出てきた」
「考え続けて眠れなかった」
このように整理すると、出来事そのもの、浮かんだ考え、心身の反応を区別できます。
分ける目的は、「自分の受け止め方が悪い」と責めることではありません。混ざり合っていたものを一つずつ見て、対処できる場所を見つけるためです。

どこに働きかけるかを考える
ストレッサーそのものを変えられる場合には、環境への働きかけが必要です。
仕事量や期限を相談する、役割分担を見直す、休憩を確保する、苦手な相手との連絡方法を変える、周囲に協力を求めるなどが考えられます。
過重な仕事や安全でない環境など、環境側に問題がある場合には、本人の考え方だけを変えようとしても十分ではありません。
一方、病気や慢性的な痛み、家族の介護、すでに起きた出来事など、すぐには変えられないストレッサーもあります。
その場合には、身体を休ませる、負担を一部減らす、信頼できる人に話す、利用できる制度や支援を探す、自分の反応に早めに気づくといった対応が役立ちます。
変えにくい状況を一人で耐えることと、状況を認めながら支援を受けることは、同じではありません。
マインドフルネスが役立つところ
MBSRやマインドフルネスは、仕事量、人間関係、病気などのストレッサーを魔法のようになくす方法ではありません。現実にある問題には、具体的な対策や支援が必要です。
マインドフルネスが役立つのは、ストレッサーに触れたとき、自分の中でどのような反応が始まっているかに気づくことです。
「呼吸が浅くなっている」
「肩に力が入っている」
「頭の中で同じことを繰り返している」
「すぐに言い返したい衝動がある」
自分でも気づかないまま、いつもの考え方や行動を繰り返す状態を、マインドフルネスでは「オートパイロット(自動操縦)」と表現します。
心や身体の反応に気づくと、自動的に行動する前に、わずかな間が生まれます。
その間に、一度呼吸を整える、その場を離れる、返答する前に考える、誰かに相談するなど、別の対応を選べるかもしれません。
マインドフルネスは、ストレス反応をなくすのではなく、反応に気づき、その後の行動を選び直すための土台になります。

ストレス反応が長く続くときは
眠れない、食欲が著しく変化した、気分の落ち込みが続く、仕事や生活に支障が出ている、飲酒量が増えているといった状態は、心身からの重要なサインです。
強い苦痛がある場合や、これまでできていた生活が難しくなっている場合は、セルフケアだけで抱え込まず、医療機関、心理職、職場の相談窓口などにつながることも大切です。
SHIPマインドフルネス瞑想センターのMBSR
SHIPマインドフルネス瞑想センターでは、ストレスをただなくそうとするのではなく、ストレッサーに触れたとき、自分の心や身体に何が起きているのかを、体験を通して丁寧に学んでいきます。
瞑想やボディスキャンなどの実践に加え、必要に応じて、出来事・考え・感情・身体反応などを整理するコラム法を用いたセルフモニタリングも取り入れながら、ストレスへの自動的な反応に気づき、自分自身や日々の出来事との新しい関わり方を8週間かけて探していきます。

まとめ
ストレッサーとは、心や身体に負担をもたらす刺激や状況です。
ストレス反応とは、ストレッサーに対応しようとして、心理面、身体面、行動面に起きる変化です。
この二つを分けて考えると、
・ストレッサーそのものを変えられるのか
・環境調整や周囲の支援が必要なのか
・心身の反応を落ち着かせる必要があるのか
・専門家へ相談した方がよい状態なのか
を整理しやすくなります。
ストレスをすべて自分の内側の問題として抱え込む必要はありません。
変えられる環境には働きかけ、変えにくい状況では支援を求めながら、自分に起きている反応に気づいていく。その両方が、ストレスとの関わり方を考えるうえで大切です。
参考にした主な資料
・厚生労働省「こころの耳」ストレス要因(ストレッサー)
https://kokoro.mhlw.go.jp/glossaries/word-1621/
・厚生労働省「こころの耳」ストレス反応
https://kokoro.mhlw.go.jp/glossaries/word-1619/
・厚生労働省 e-ヘルスネット「ストレス」
https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/dictionary/heart/yk-031.html
・World Health Organization(2026)Stress
https://www.who.int/news-room/questions-and-answers/item/stress
<スタッフ>
上田知之(社会福祉法人SHIP所属)
公認心理師、精神保健福祉士、社会福祉士、介護福祉士
SEP(トラウマ療法:ソマテック・エクスペリエンシング)
TSM(トラウマ・センシティブ・マインドフルネス)
MBSR講師 in Traning(IMA/IMCJ)
USPTベーシックレベル
TFT初級アルゴリズム

