こんにちは。SHIPマインドフルネス瞑想センターの「うえ田ボビ夫」です。
強い緊張を感じたとき、心臓が速く打つ。呼吸が浅くなる。肩や顎に力が入る。お腹の調子が悪くなる。
こうした変化は、気の持ちようだけで起きているわけではありません。
私たちの身体には、危険や困難に対応する仕組みが備わっています。その中心となるのが、自律神経系とHPA軸(視床下部―下垂体―副腎系)です。
この記事では、ストレッサーに触れたとき、身体の中で何が起きるのかを分かりやすく紹介します。

ストレス反応は身体を守る仕組み
ストレス反応というと、身体に悪いものと思われがちです。しかし本来は、危険や困難に対処するための防御反応です。
道路へ突然車が飛び出してきたとき、私たちはじっくり考えてから動くわけではありません。瞬時に注意が向き、心拍数が上がり、筋肉へ力が入り、危険を避けようとします。
ストレス反応は、心と身体がその状況を乗り越えようとしている働きです。
問題になるのは、反応が起きることではなく、強い緊張が長く続いたり、危険が過ぎても回復しにくくなったりする場合です。
脳が「対応が必要だ」と判断する
ストレス反応は、実際に危険が迫ったときだけに起こるわけではありません。
人から批判されたとき、仕事の期限が迫っているとき、将来を心配しているときにも起こります。まだ起きていない出来事を考えているだけで、身体が反応することもあります。
反対に、安心できる人がそばにいる、自分で対処できると感じる、十分に休めているといった条件によって、反応が弱まる場合もあります。
身体は出来事そのものだけでなく、その出来事をどのように受け止めているかにも反応します。
ただし、これは「考え方が悪い」という意味ではありません。過去の経験、疲労、周囲の環境、利用できる支援など、さまざまな条件が影響します。
自律神経系の働き
自律神経系は、心拍、呼吸、血圧、消化、発汗、体温などを自動的に調整しています。主に、交感神経系と副交感神経系から成り立っています。
危険や負担への対応が必要になると、交感神経系の活動が高まり、身体には次のような変化が現れます。
- 心拍数や血圧が上がる
- 呼吸が速く、浅くなる
- 筋肉に力が入る
- 発汗が増える
- 注意が危険や課題へ集中する
- 消化が一時的に抑えられる
- すぐに使えるエネルギーが供給される
これは、身体が「闘う」「逃げる」など、素早い行動に備えている状態です。人によっては、動けなくなる、頭が真っ白になるといった反応が現れることもあります。
危険や負担が過ぎると、副交感神経系などの働きによって、心拍や呼吸が落ち着き、身体は回復へ向かいます。
交感神経が悪く、副交感神経がよいという単純な関係ではありません。交感神経は活動するときに必要です。
大切なのは、緊張しないことではなく、緊張した後に回復できることです。
HPA軸とコルチゾール
交感神経系による素早い反応に続いて、HPA軸がストレスへの対応を支えます。
脳の視床下部から下垂体、副腎皮質へと情報が伝わり、コルチゾールというホルモンが分泌されます。
コルチゾールは、身体が困難に対応できるようにエネルギーを確保し、代謝、免疫、血圧などを調整します。
「ストレスホルモン」と呼ばれますが、コルチゾール自体が悪いわけではありません。普段から体内で分泌され、朝の目覚めや血糖、免疫反応などにも関わっています。
必要なときに働き、必要がなくなった後に適切に調整されることが大切です。

ストレス反応が長く続くと
仕事、人間関係、介護、病気、経済的な問題などが続くと、身体が十分に回復できない場合があります。
また、出来事が終わっていても、何度も思い返したり、次に起きることを警戒したりして、緊張が続くこともあります。
慢性的なストレスは、睡眠の乱れ、筋肉の緊張や痛み、頭痛、胃腸の不調、疲労、集中力の低下、不安や気分の落ち込みなどと関係します。
ただし、これらの症状がすべてストレスだけで起きるわけではありません。身体症状を「ストレスのせい」と自己判断しすぎないことも大切です。
身体に現れるサインに気づく
ストレス反応は、気持ちより先に身体へ現れることがあります。
- 呼吸が浅くなる
- 肩が上がる
- 顎をかみしめる
- 胸や胃の周辺が緊張する
- 身体が落ち着かない
- 疲れているのに休めない
- 眠る前まで頭が働き続ける
こうしたサインに早く気づけば、限界を迎える前に、休む、仕事量を調整する、人に相談する、その場を離れるなどの対応を選びやすくなります。
身体に注意を向ける目的は、反応をすぐに消すことではありません。
「いま、身体が何かに対応しようとしている」と気づくことが、次の対応を選ぶ第一歩になります。
マインドフルネスが役立つところ
マインドフルネスでは、呼吸、身体感覚、感情、考えなど、その瞬間の経験へ注意を向けます。
「呼吸が浅くなっている」
「肩に力が入っている」
「逃げたいという衝動がある」
身体の変化に気づくと、自動的に行動する前に、わずかな間が生まれます。
その間に、姿勢を変える、無理のない範囲で呼吸を整える、少し休む、助けを求めるなど、今の自分に必要な行動を選べるかもしれません。
マインドフルネスは、身体の反応を支配する方法ではありません。身体から届く情報を受け取り、必要な選択につなげるための実践です。
ただし、強い不安やトラウマ体験がある場合、身体へ注意を向けることで苦痛が強まることもあります。そのときは、目を開ける、周囲を見る、音を聞く、実践を中断するなど、安全を優先してください。
医療機関への相談が必要なとき
胸の痛み、強い動悸、息苦しさ、めまい、胃腸症状、頭痛などは、身体の病気によって起きている可能性もあります。
症状が強い、繰り返す、長く続く、生活に支障がある場合は、ストレスと決めつけず、医療機関へ相談してください。
突然の強い胸痛、著しい呼吸困難、意識が遠のくなどの症状がある場合には、速やかに医療機関へつながる必要があります。
SHIPマインドフルネス瞑想センターのMBSR
SHIPマインドフルネス瞑想センターでは、ストレスをただなくそうとするのではなく、ストレッサーに触れたとき、自分の心や身体に何が起きているのかを体験から学びます。
瞑想、ボディスキャン、マインドフル・ムーブメントを通して、身体から届く小さなサインに気づき、自分自身やストレスとの新しい関わり方を8週間かけて探していきます。
目指すのは、ストレス反応を完全になくすことではありません。身体の変化に早めに気づき、休む、環境を調整する、人に相談するなど、必要な対応につなげていくことです。
気づきを、日々の暮らしへ。
【MBSRプログラムについて詳しく見る】

参考にした主な資料
・Chu B, et al. Physiology, Stress Reaction. StatPearls.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK541120/
・Tsigos C, et al. Stress: Endocrine Physiology and Pathophysiology. Endotext.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK278995/
・American Psychological Association. Stress effects on the body.
https://www.apa.org/topics/stress/body
・厚生労働省「こころの耳」ストレス反応
https://kokoro.mhlw.go.jp/glossaries/word-1619/
<スタッフ>
上田知之(社会福祉法人SHIP所属)
公認心理師、精神保健福祉士、社会福祉士、介護福祉士
SEP(トラウマ療法:ソマテック・エクスペリエンシング)
TSM(トラウマ・センシティブ・マインドフルネス)
MBSR講師 in Traning(IMA/IMCJ)
USPTベーシックレベル
TFT初級アルゴリズム

